デザインという言葉には「意匠を考える」事だけでなく、「設計」、そして「問題解決」という意味があります。これを企業に当てはめると、社員の働きやすい環境を創ることもデザインのひとつ。つまり経営はデザインそのものというのが私達の考え方です。

パールマネキンでは、基幹流通センターであるパールデポ東海のリニューアルを行いましたが、この時に大事にした考え方が「人を想うこと」。社員にとって働きやすい環境・空間とはなにか?という事をずっと考え続け、刷新されたパールデポ東海。

写真を中心に、もともとの課題と、それをどうデザインが解決したのかをご紹介します。


働き方を少しでも豊かなものに ハード&ソフトからアプローチ

私たちは、2018年2月に岐阜県にあるパールデポ東海商品流通センターの増床・リニューアルオープンを致しました。計画立案はこれに遡る事1年ほど前。

まず最初にリニューアル計画を練るプロジェクトメンバーを編成し、現状把握と課題の解決方法を模索しながら計画を詰めていきました。社内メンバーだけでなく、経験値の高い設計・施工パートナーが協力的に議論に参加・適切なアドバイスをくれたこともあり、現状の倉庫機能の課題解決だけのようなハード面の改善だけでなく、未来の流通センターのあり方を設計に落とし込むことができました。

そしてそこで働く社員の意見を多く取り入れたことで、効率化だけでなく、社員の働き方を少しでも豊かなものにしたい想いをこの計画に込めることができました。

大家族主義の経営を改めて考えてみる

私たちが最も大切にしている企業理念の一つに、「大家族主義」の経営という考え方があります。「お互いを尊重し、共に高め、助け合う」という考え方です。

以前は極めて日本的で、古い考え方のように考えられていましたが、最近ではまた見直されてきつつあります。実際にアメリカ企業の経営にも取り入れられている考え方で、国は変われどやはり企業とは「人」という事なのだと思います。

すこし堅い話になりますが、現在日本企業を最も悩ませている事はなんでしょうか?ほとんどの経営者は異口同音にこう答えると思います。「人手不足」です。労働人口の減少は深刻で、かつ簡単に解決できない課題でもあります。

結果、企業は生産性を重視して、より効率的で、無駄のない経営を求められることになりますが、効率を求めるあまり仲間がストレスを溜めるような事を私たちは決してしたくないのです。

皆が充実した毎日を過ごせ、長く共に働く喜びを共有できる。そんな経営が私達の理想です。

新しい価値を仲間と共有する場所へ 休憩施設のビフォーアフター

そこで今回私たちはこのリニューアル計画にあたり、自分達の最も得意とする「デザインの力」で工場内の休憩施設の改革に着手しました。

一般的に工場内の食堂・休憩室は「食事をする」「休憩をする」為だけに存在しており、それ以上の価値は求められていません。私たちは働く環境にはリフレッシュできるスペースが不可欠と考え、今回の食堂・休憩施設改革のキーワードをシンプルに「リフレッシュできる空間を設ける」としました。

私たちは普段アパレル等の店舗デザイン・設計・施工をしていますので、内装デザイン・設計のノウハウがあります。今まではお客様向けのデザインをしておりましたが、今回は自分達が使う、自分達の為のデザインです。限られた予算と時間でどのように作り上げるか。流通センターに勤務する社員全てが今回のお客様でした。休憩施設に新しい価値を仲間と共有するのです。

以前の食堂の様子

とことん、使う人の気持ちになって考えた

リフレッシュできる休憩室は、私達の得意とする店舗デザインと異なる点もいくつかあります。

まず今回のお客様、つまり工場勤務する社員の多くは、コンクリート土間での立ち作業であったり、部署によっては塗料や粘土・スチロールなどを扱っています。当然ですが、靴もユニフォームも汚れています。

そこでまず、床は掃除がしやすく、且つ、疲れた足に優しいクッションフロアーを使用しました。テーブルや椅子も当初はファブリックなどの素材を選んでいましたが、清掃する人の作業のしやすさや汚れにくさを考慮した素材を選びました。使う側にも気遣いをさせないためです。

機能的に必要十分なキッチンも配し、得意のディスプレイにはリラックス効果を高める為にグリーンを使い、食事をとるテーブルとは別にゆっくりくつろげるソファー&コーヒーテーブルと、側にはマガジンラックを設けることにしました。

入り口はシャビーシックな雰囲気を演出
ナチュラルテイストのカフェテリア内
ゆっくりくつろげるソファー&コーヒーテーブル

働く人を想うデザインが今求められている

新たに工場内につくられた食堂兼休憩室は「BREAK ROOM」と名づけました。「休憩部屋」の意味で、 開設以来、毎日社員に利用されています。 今までの長机とパイプ椅子で並んで黙々と食事をするスタイルではなく、4人が座れるテーブルを数多く設けたことで、新しいコミュニティで和気藹々とした休憩時間が生まれているようです。

落ち着いた気持ちで普段はあまり話すことのない部門の方とも会話のできる貴重な時間が増えたり、些細なことでも話してみることでお互い分かりあえたり、何気ないアドバイスで気持ちが楽になることもあります。 「お互いを尊重し、共に高め、助け合う」大家族主義は、まさにこのような社員と社員の交流から生まれるのでしょう。

また、ひと時の休憩でしっかりリフレッシュする事で、メリハリの有るワーキングスタイルが出来てきています。

少しの手間で、社員に喜んで貰える空間を造ることは出来ます。企業にとって一番大切な財産は「人」、働く人への想いをデザインに反映することで、実際に使用する社員がその想いを体感し、満足してもらえる。そして、社員の満足度を高めた企業は、輝きを増します。

デザインにはその力があると私たちは信じていますし、これからもその信念を持ち続けたいと強く願っています。