これからの店舗はエクスペリエンス(体験)がすべて

ラグジュアリーかつカジュアルな体験、サスティナブルな消費。ここまではNYの消費の大きな変化を見てきました。

それでは、店舗の役割はどう変化しているのでしょうか?人は何を求めて店舗を訪れるのでしょうか?

私がNYで目の当たりにしたのは、“リアルを求める人々”です。ものの買い方はデジタルでとても便利になりました。Amazon Goを体験してみて実感しましたが、ECやキャッシュレス決済によって、今までの支払いの待ち時間などに対するストレスがなくなることは素晴らしい体験です。

Amazon go

一方で、人々が求めているのはリアルな体験を通じて、楽しい時間を過ごすこと。つまり、人は外にでたいし、現地でしが体験できない機会を逃したくない、という欲求があるのだと思います。そうやって、顧客を満足させることのできる体験を、あの手この手で次々と生み出しているのが、ニューヨークという場所だと感じました。

第1回から第3回まで、ニューヨークの“小売店舗最新事情2019″をレポートしてきました。

第1回目「店舗=売り場はもう古い?リテールテイメントが買い物体験を変える」
第2回目「テクノロジーは顧客体験を変える! NY最新デジタル店舗4選」
第3回目【NYホテル4選】キーワードは泊まらなくても自由に使える空間  

また、今回のレポートでは紹介しきれていない新しい小売のかたちが次々と生まれています。そしてNYの多くの店舗を訪れ感じたのは、「顧客体験がすべて」だということです。店舗でどのような体験をしてもらい、長く深くブランドと関わってもらえるのかを第一に考え、そのための店舗づくりをしていく。

例えば、カフェやヨガスタジオが併設されているなど、NYではアパレルだけの店はもう無いに等しい。試着もゆったりと快適にできる環境や、長く滞在してもらうためのリラックススペースも整えられていること。また、デジタルな要素をうまく活用したストレスのない買い物が、顧客体験価値向上のためには必須であるということ。さらには、ブランドは自らの透明性や理念を伝える場としてリアル店舗を位置付け、プロダクトの製造プロセスをディスプレイしたり、素材を見せたり、それを定期的に入れ替えショールームのような空間をつくるなどです。

第1回目でご紹介した、リテールとエンターテイメントを掛け合わせた「リテールテイメント」を実現し、買い物自体がワクワクする楽しい時間となるように、エクスペリエンス(体験)をデザインしていくこと。それこそが、これからのリアル店舗にとってもっとも大切だと考えます。