「体験デザイン」がこれからのリアル店舗の鍵を握る

これからのリアル店舗にとって大切なことは、顧客が感動する体験をどこまでデザインできるかだと考えます。ここで言う「体験デザイン」とは、顧客があらゆるタッチポイントでブランドと関わる”体験”を考え、デザインするということです。どのように顧客とブランドがコミュニケーションをとり、いかに顧客の記憶に残る体験を生み出せるかを考え、空間に落とし込むということです。楽しい体験は誰かに伝えたくなるように、その影響はどんどん広がっていきます。そんなワクワクする体験がリアル店舗で感じられるなら、人は必ずリアル店舗を訪れたくなるはずです。

ただし、ブランドの一貫したメッセージやコンセプト、魅力的なプロダクトはもっとも重要です。人々を共感させるブランドとしての明確なメッセージがあるからこそ、体験はより人々の心に刻まれます。当たり前のことを言っているようですが、根本となるブランドやプロダクトありきであるのは、今後も間違いのない価値であると考えます。

NYの事例をそのまま真似れば成功すると言うほど簡単なことではありませんが、人々の買い物スタイルが刻々と変化している今、私たちはリアル店舗の役割を今一度見直し、「体験」をデザインすることを考えていくべきです。


最後に、今回のNY訪問で感じたことですが、日本の小売店舗も確かに新しいスポットは続々と出来ているし、新たなムーブメントも起こりつつありますが、やはりニューヨークが先をいっているように思います。先というのは語弊があるかもしれませんが、何より買い物体験を“おもしろい!”と感じたことが全てでした。

そして、アメリカと日本の違いは、要はやっているか、やっていないか“だけ”だと思います。いかにお客様を満足させる体験を生み出せるか、そのためにできることやおもしろいアイデアを、既成概念にとらわれずどんどん実現していく。同時にそこにはブランドとしての信念や確固たる一貫したメッセージ性がある。そんな小売店舗がひときわ注目を浴びて、支持を集めていると感じました。

失敗もあるかもしれないけれど、またチャレンジすればいい。そんなマインドで私たちが取り組んでいけば、日本の消費はもっと楽しく、ワクワクするものになるんじゃないか、そう思います。

デジタルもリアルもシームレスに融合していくこれからの世界。店舗というリアルな空間で、リアルな人間が、リアルに体験する、そのタッチポイントである”体験”を私たちはデザインしていかねばなりません。