パールマネキンのクリエイティブに欠かせないクリエイターを紹介するインタビュー企画「クリエイティブの美学」。今回は、パールマネキンでマネキンメイク師として活躍する丹羽 徳彦(にわ のりひこ)を紹介します。

これまでマネキンのメイクに真摯に向き合ってきた丹羽の、クリエイティブの美学とは?

▲丹羽 徳彦 / パールマネキン マネキンメイク師。2001年入社後、マネキンのメイクアップ分野でパールマネキンの数多くのプロジェクトに携わる。現在はマネキンのメイクだけでなく、キャラクターやオブジェのような造作物の彩色まで、幅広く手掛けている。

二十歳の時に愛知県にあったマネキン会社に配達作業員として入り、納引き設営を2年間勤めました。その頃から、何となくですがマネキンの表情やメイクの神秘さに心惹かれていて、ある日「一人しかいなかったメイキャップが辞めるからやってみないか」と声が掛かり、マネキンメイクの道へ。

始めた頃は先輩の彩色者からメイクの基礎を学びながらのメイク仕事でしたが、数年後その会社が扱うことになったアメリカの有名マネキンメーカーである”パティーナV”と出会い、その個性的なカッコよさに一目惚れ。また、このマネキンを通して主要百貨店など仕事の幅が拡がり、様々なクリエイターとの交流がうまれて刺激を受けたことで、さらにマネキンの魅力に取り憑かれていったのです。

のちにその会社が倒産し、飛び込みでパールマネキンの門を叩きました。自身をアピールする物がなかったので、記憶を辿りながらメイク実績をイラストで描き纏めたスケッチブックを持って面接に臨み、どれだけマネキンが好きかを口ベタながら売り込んだことを今でも覚えています。

面接に持ち込んで臨んだメイク実績イラスト

入社当時は量販店向けのシーズンメイク真っ盛りだったのですが、毎度メイクの色が変わるだけで顔の変化に乏しさを感じ、何とかしようと奮闘。当時流行っていたマルキュー系メイク(当時流行したガングロ系メイク)を試作して社内提案をしたり、長年オリジナルマネキンのカタログにも携わらせてもらいました。

リアルメイクが主流だった頃は「マネキンの顔は会社の顔」と言われていた時代で、自分の中では大変プレッシャーでしたね。今ではメイクマネキンがずいぶん減ってしまいましたが、まだまだマネキンというツールは可能性を秘めていると思うので、着色だけに拘らず様々な素材・要素を模索して、これからの時代にあったマネキンを作りたいです。

2010年:パールマネキンマネキン展示会”魅惑のマドンナたち”より【MABEL】。“ネオクラシックなマドンナ”をキーワードにドレスアップしたヤングアダルトなメイク。
EURO SHOP 2017 に出品した【Perle】。“ミステリアスな夜会の貴婦人”をイメージしてハードウィッグを被ったモノクロトーンのマネキンに、リアルメイクのマスクを装着。
フェイクサボテン。植物の瑞々(みずみず)しく愛くるしいイメージを、色と艶で表現。
カリフォルニアスタイルの空間演出に、中古サーフボードをナチュラルなウッドカラーにリメイク。
毒蜘蛛りんご。りんごの中にドクロの顔。毒が滲み出てくるような腐り感を想像して着色。

色を分析し、色を操ること。

仕事をする上で大切にしていることは何ですか?

メイクという仕事をする上で一番大切にしているのは、「色を”分析”し”操る”」ということ。

色というのは光と影で成り立っています。人体模写のマネキンにどの色をどれぐらいの量にしたらイメージ通りになるかを分析して、色を調合したり重ねたりしていくので、「見て感じ取れる力」と「素材や材料の知識」で仕上がりやスピードに大きく差が出ます。

あとは、お客様のイメージをとにかく頭に思い描いて、肌色を決めたり、メイクは目立つようにしようとか、そうやって想像していってメイクプランをします。また、製作のシュミレーションも大事で、一度頭の中で一通りの製作をしてみます。自分だけ満足するものにならないように、お客様になりきってイメージをかたちにすることを大切にしています。

どんなところにやりがいを感じていますか?

お客様の予想を超えたいという想いで作っているので、満足している声が届いた時は達成感があります。何も報告が無くても無事納まったんだとホッとすると共に「よし!次はどう料理してやろう」と意気が上がります。

大事にしているもの・ことは何ですか?

自分の感性を信じること。その時その時のひらめきや発想で今まで乗り越えられてきたので、これからも自分が感じることを信じ続けたいです。

最近感銘を受けたできごとは何ですか?

先日、和傘作りの実演を観たのですが、日本の伝統工芸は凄いなと改めて感じ、他工芸品も調べたくなりました。同時に、その仕組みや色柄を商品に取り入れらないかと思い浮かべてます。

尊敬している or 憧れの人はいますか?

若い頃に出会ったバーのマスター。漫才師の一面も持った人で、付き人みたいに住み込んで、粋も甘いも教えられた私の人生の師匠です。ヒゲもその人を真似て生やし始めて、いまに至ります。

今、注目していること・ひと・ものはありますか?

3D・AI・ロボットといったテクノロジー技術の進化。マネキンの塗装やメイクは現在も手作業で技術が伴うアナログな世界なので、その一部でも自動化できる機器や技術が出てこないか情報を注視しています。

休日の過ごし方は?

読書。サスペンスものが好きなのですが、今はアガサ・クリスティを読破しようと思ってます。あとは、美術館にフラッと出かけたりします。もうすぐ岐阜県美術館がリニューアルオープンするので待ち遠しいです。

好きな空間を教えて下さい

凛とした静けさのある神社。それと、ホームセンターは1日中居られますね。

今いちばんしたいことは何ですか?

家族旅行。大きくなった二人の娘のほうが忙しく、すれ違いの日々なので・・・


自分の引き出しを多く持つことが付加価値になる

自身ではクリエイティブというより職人仕事だと思っています。お客様の思いを色で表現するのは当たり前ですが、そこにもう一つ拘りを入れたり、もう一手間酌(く)んであげることが、クリエイティブなのかもしれません。

自分の引き出しを多く持つことで、お客様にさらに良いアイデアを提案することができます。そうやって付け加えたものが、クリエイターと呼んでもらえる私たちの個性となり、付加価値となるのではないでしょうか。

クリエイティブの道のりはまだまだ長いですが、お客様に喜んでもらい、人々の心を動かすアイデアを、これからも蓄え続けていきたいです。